敷金を取り戻したい…
賃貸住宅なのに部屋を汚してしまった…原状回復ってどこまで必要なの?
原状回復とは部屋を借りた当時の状態に戻す事ではありません!
賃貸住宅に住んでいる方はこのような悩みを感じる事があるのではないでしょうか。
この記事では「大事な敷金を取り戻す.vol1」として、「原状回復」とは何かということを調査します。
実は、カレンダーの画鋲痕や家具や家電の設置痕の補修に、敷金を使ってはいけないのです。
原状回復の意味を知ることで、大切な敷金が帰ってくるかも!?
原状回復って何?どんな意味なの?

賃貸住宅の原状回復におけるトラブルが頻発したことを受け、
実は、国土交通省が「原状回復めぐるトラブルとガイドラインを策定」しています。
そして、こちらのガイドラインでは、原状回復について以下のように規定されています。
「原状回復とは、借主が借りた当時の状態に戻すことではない」
ざっくりいうと
「借りた当初のきれいな状態にはしなくていいよ!多少の汚れは仕方ないよ!」
という事なんです!
つまり、
経年劣化により生じた汚損、破損の修繕は原状回復ではないので、借主の責任ではない。
つまり敷金を使って修繕しなくて良い!
という事になるんですね。
例えば、過度なハウスクリーニングや洗面所の交換、壁紙や床フローリングの張替は、原状回復の範囲ではないという事なんです!
そのため、敷金を使って、過度なクリーニングや水回りの交換、クロスやフローリングの張替を行う事は、本来やってはいけないという事なんですね。
当然ですが、大家さんはなんでもかんでも敷金で直そうとします。要注意!
どこまで、敷金で修理する必要あるの?
さきほど紹介した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、借主と貸主の修理の責任を次の図のように定めています。
この図解の青字が敷金で修繕して良い範囲という事になります。
また表にまとめると次のようになります。
見ていただいたとおり、借主負担(敷金を使ってよいところ)で修繕する箇所、結構少ないんです!
よく誤解されているところでは、カレンダー画鋲痕や家具の設置痕は貸主(大家さん負担)で修繕するということですね。
図表をまとめると、
借主の負担(敷金を使う)範囲:借主(住民)の故意、過失、善管注意義務違反、その他通常の超えるような使用による消耗等の修繕
貸主の負担(敷金を使えない)範囲:経年劣化・通常の使用による消耗等の修繕
ここで注目したいポイントは
「経年劣化・通常の使用による消耗等の修繕」は、敷金を使って修繕する必要はない
という事なんです!
大家さんはなんでもかんでも敷金で修繕しようとするから要注意!
借主(住民)が敷金で直さなくても良い具体的な事例

ここから、敷金で直すべきではない汚れについて紹介していきます。
大家さんは敷金で全部修繕しようとするので、抑えておきたいポイントです。
1 壁紙やフローリングの通常の汚れ
故意や過失により生じた壁や床の破損・汚損以外の破損・汚損は、貸主負担で修繕します。
よくハウスクリーニング費が敷金で請求されますが、これは敷金ではやらなくて良いものです。
きっぱり断りましょう!
一方、喫煙による汚れ、料理を落としてしまった汚れといった場合、敷金で直すことになってしまします。
余談ですが、この場合、火災保険を使いましょう!
2 地震や雨漏りで発生した汚れ
次のような汚れです。
- 地震で物が落ちて床や壁が汚損・破損した。
- 台風の影響で壁や床のペンキがはがれた
- 台風の影響で窓の開閉がしづなくなった
- 地震の影響でドアが壊れた
こうした損傷は、明らかに借主の責任ではないので、敷金で修繕する事は出来ません。
きっぱり自信を持って断りましょう!
なお、自然災害によって生じた汚れ等は、大家さんが加入している火災保険で修繕出来ます。
自然災害によって汚れ等が生じた場合は、積極的に大家さんに連絡しましょう!
3 家具、テレビ、冷蔵庫による黒シミ、カレンダー等の軽微な画鋲
これは私もびっくりしました!
テレビ・冷蔵庫・電子レンジによる壁紙の黒シミ焼けやカレンダーの画鋲は通常生活の中で生じる汚れなので、敷金ではなく大家さんの責任で修繕する。
という事です。
こうした汚れや家具痕に引け目を感じている人も多いと思うのですが、ぜんぜん気にしなくて大丈夫!
こういう事を知っているだけで全然違います。
迷ったときはさきほど紹介した図表で判断していきましょう!
判断がつかない場合は過去の判決を見てみましょう

ここまで原状回復について調査をしてきました。
図解や考え方がある程度網羅してきましたが、これだけでは、
結局、どこまで敷金で修繕するの…?
と判断に迷う時もあると思います
そういうときは、過去の裁判の判決事例を調べてみましょう!
過去の判決事例の調べ方
調べ方は2つあるで、2つを紹介します。
RETIO(一般財団法人 不動産適正取引推進機構)
1つ目は、RETIO(一般財団法人 不動産適正取引推進機構)の判決事例集です。
こちらでは、平成11年以降の原状回復に係る裁判の判決事例を見る事ができます。
参考に紹介すると
Xは、ペットを飼育していた以外は、丁寧に住宅を使っており、本件建物につき通常の損耗以外に特別の損傷を与えたことはなく、 約定及び特約事項に照らしXが負担すべき原状回復費用はないとして、Yに対し敷金全額の返還を請求する訴えを提起した。
【判決】ベット消毒に要する費用については Xの負担、その他の原状回復 費用は Yが負担すべきもの
こんな感じです。
原状回復にかかる判例の動向
2つ目は国土交通省のガイドラインの判決動向です。
こちらでは、平成2年以降の原状回復に係る裁判の判決事例を見る事ができます。
【概要】賃借人Xは、建物を明け渡したことによる敷金の返還を求めて提訴した。一方、賃貸人Yは賃貸借契約に基づく明け渡し時の原状回復の特約(契約時点における原状すなわちまっさらに近い状態に回復すべき義務)を賃借人Xが履行しなかったことで、賃貸人Yが負担した畳、襖、クロス及びクッションフロアの張替え並びに清掃費用の合計48万2350円のうち、敷金によって清算できなかった差額金28万4350円の支払を求めて反訴した。
【判決】賃貸人Yの主張を斥け、賃借人X支払済の敷金全額の返還を命じた。
参考に紹介すると
どちらかというとこちらの方が探しやすく、身近な感じもするので、おすすめです!
気になることがあれば先回りしてこんな判決が出ているから…と大家さんと協議するのが効果的!
まとめ
この記事では「原状回復とは何か」ということについて調査し、
敷金で修繕するべき内容と、敷金を使う必要のない修繕について調査しました。
結論としては、
- 敷金で修繕できる汚れは、国土交通省のガイドラインで規定されている。
- 借主と貸主の負担範囲をまとめた図表がある
- 判断に迷った場合は、判決事例を見てみる
ということになります。
大家さんはなんでもかんでも敷金で修繕しようとします。
大家さんのほとんどは確信犯的です。
お金は大切です!国が決めた内容ですし、怯むことなく、しっかり交渉しましょう!
また、こちらの記事では、「過失である汚れには火災保険を使いましょう!」という事を紹介しています。
https://inagelocal.com/blog/startup/kasaihoken/21/02/また、こちらの記事では、「敷金を無駄に使わせないたった一言」を紹介しています。
https://inagelocal.com/everyday/kasaihokenonly1/21/02/併せて参考にしてくださいませー!